英語が話せるだけでは足りない現実
「子どもが英語をペラペラに話せるようになる」
教育移住を考える方の多くが、こんなイメージを持っているのではないでしょうか。
私も3年半前、マレーシア・ペナンに移住した当初はそう思っていました。
長女のHikariが5歳、長男のZenが3歳のときです。
インターナショナルスクールに通えば、自然と英語が身につく。
そう信じていました。
実際、子どもたちは驚くほど早く英語を習得しました。
特にHikariは、6ヶ月も経たないうちに先生や友達と英語で会話を始めました。
「これで安心」と思ったものです。
でも、本当に必要なのは「英語力」だけではなかった。
そのことを痛感したのは、移住2年目のある出来事がきっかけでした。
Hikariが直面した“見えない壁”
ある日、Hikariが学校から帰ってくるなり、こう言いました。
「ママ、今日ね、グループワークで何も言えなかった」
Hikariの英語力は十分でした。
単語も文法も、同年代のネイティブの子と遜色ありません。
でも、グループディスカッションで自分の意見を言えなかったのです。
理由を聞くと、こう答えました。
「間違えたらどうしようと思って」
これは「英語の問題」ではありませんでした。
自分の考えを人前で主張する「自信」の問題です。
日本の教育では、正解を導き出すことに重きが置かれます。
間違えることは恥ずかしいこと、という価値観が無意識に染みついていたのです。
インターナショナルスクールで求められる“自己表現力”
インターナショナルスクールでは、毎日のように「あなたの意見は?」と問われます。
正解がある問題よりも、自分の考えを論理的に伝える力が重視されます。
Hikariの通う学校では、小学1年生からプレゼンテーションの授業があります。
テーマは「好きな動物」や「週末にしたこと」など簡単なものですが、
「なぜそれが好きなのか」「どう感じたのか」を自分の言葉で説明しなければなりません。
英語が話せることと、自分の意見を表現できることは別物なのです。
この気づきは、私自身にとって大きな学びでした。
Zenに見えた“粘り強さ”の違い
長男のZenは、Hikariとは対照的なタイプです。
彼はとにかく行動が早い。間違えても気にしません。
でも、彼には別の課題がありました。
それは「諦めの早さ」です。
算数の問題が少し難しくなると、すぐに「わからない」と言って手を止めてしまいます。
先生に聞けばいいのに、自分で考える前に諦めてしまう。
学校の先生からも、「Zenはチャレンジ精神はあるけれど、粘り強さが足りない」と指摘されました。
これも、日本の教育環境で育った子どもに共通する傾向かもしれません。
“グリット”を育てるために親ができること
心理学の用語に「グリット(GRIT)」という言葉があります。
困難に直面しても粘り強く目標に向かって努力する力のことです。
ペナンのインターナショナルスクールでは、この「グリット」を育てる教育が重視されています。
間違えることを恐れず、何度でも挑戦する姿勢を評価するのです。
私が実践しているのは、子どもが何かに失敗したとき、
「どうすれば次はうまくいくかな?」と問いかけることです。
答えを教えるのではなく、自分で考える習慣をつけさせています。
親自身の“マインドセット”が試される
実は、教育移住で一番変化を求められるのは、親のマインドセットかもしれません。
私たち日本人は、子どもの頃から「空気を読む」「周りに合わせる」ことを美徳とされてきました。
でも、インターナショナルスクールでは「自分らしさ」が何よりも大切にされます。
最初は戸惑いました。
授業参観で、先生が子どもに「あなたはどう思う?」と聞く場面を何度も見ました。
日本の教育では、「先生の話を静かに聞く」ことが良いとされていたからです。
“正解主義”から“プロセス重視”への転換
マレーシアの教育で驚いたのは、プロセスを非常に重視することです。
答えが間違っていても、そこに至るまでの思考プロセスが評価されます。
Hikariの学校では、テストの点数だけでなく、
「どうやってその答えにたどり着いたか」を説明する機会が定期的にあります。
間違いを「失敗」ではなく「学びの機会」と捉える文化が根付いているのです。
この考え方は、親である私自身の価値観も変えました。
子どもがテストで100点を取れなくても、努力したプロセスを認めて褒めるようになりました。
教育移住の“本当の効果”は数年後に現れる
よく「教育移住の効果はいつ現れるのか」と聞かれます。
確かに、英語力は3ヶ月〜半年で目に見えて伸びます。
でも、本当に大切な力は、もっと時間がかかります。
自己表現力、粘り強さ、多様性を受け入れる心。
これらは、日々の学校生活の中で少しずつ育まれていくものだと実感しています。
為替レートを気にするよりも、子どもの成長を長い目で見守る姿勢が大切です。
(2026年5月22日現在、1MYR=40.04 JPY)
移住を検討中の方へ
教育移住を考えるとき、英語力の向上だけに焦点を当ててしまいがちです。
でも、それ以上に大切なのは、
「子どもが自分らしく生きる力を身につけられる環境かどうか」
ではないでしょうか。
マレーシア・ペナンでの生活は、決して楽な道のりではありません。
戸惑うこと、悩むこともたくさんあります。
それでも、子どもたちが少しずつ成長していく姿を見ていると、
「この選択は間違っていなかった」と心から思えます。
教育移住は、子どもだけでなく、家族全体の成長の機会なのです。

