こんにちは。マレーシア・ペナン在住、3人の子育て中のSaoriです。
先日、二つのニュースが目に留まりました。一つは、日本の文部科学省が「国際バカロレア(IB)に関する研修会」を開催するというもの。もう一つは、ムサシインターナショナルスクール・トウキョウ(MIST)のクン校長が、国際的な教育カンファレンス「Cambridge East Asia Schools Conference 2026」に登壇するという発表です。
この二つのニュースを並べて見た時、教育移住を考える私たち保護者にとって、非常に示唆深い「違い」を感じました。それは、教育への「向き合い方」の違いです。
「研修を受ける側」と「世界で発信する側」の差
日本の文科省がIBの研修会を開催する。これは、国内の教育関係者がIBという「国際標準」を学び、理解を深めるための取り組みです。もちろん、国際教育への関心が高まっている証左ではあります。
しかし、もう一方のニュースは、海外のインターナショナルスクールの校長が、アジアを代表する教育者として国際カンファレンスの壇上に立つというものです。ここには明確な「立場の違い」があります。
一つは、国際的な教育の潮流を「学び、追いつこうとする」姿勢。もう一つは、自らその潮流の「一翼を担い、発信する」姿勢。教育移住を検討する際、この「学校や校長がどのような立ち位置にいるのか」は、これまで以上に重要な判断材料になると感じます。
校長の「見える化」が学校の質を物語る
私の子どもたちが通うペナンのインターナショナルスクールでも、校長や上級管理職の動向は保護者にとって大きな関心事です。校長がどのような教育理念を持ち、どのようなネットワークを持っているか。それは、学校が単にカリキュラムをこなすだけの場所ではなく、子どもたちを「世界」にどうつなげていくのかを左右します。
例えば、校長が国際的な教育団体の役員を務めたり、カンファレンスで講演したりすることは、その学校がグローバルな教育コミュニティの「中核」にいることを示します。それは、最新の教育トレンドや大学進学情報、教師の質の高い研修機会など、目に見えないリソースが学校に流れ込んでくることを意味します。
長女のHikari(2018年生まれ)の学校では、校長が定期的に保護者向けの説明会を開き、教育方針や世界の動向を語ってくれます。その話からは、単なる学校運営者ではなく、教育の「ビジョナリー」としての顔が見えます。この「リーダーシップの質」は、学校選びで見過ごされがちですが、実は子どもたちが受ける教育の「深さ」や「広がり」に直結する要素なのです。
教育移住は「環境」そのものを買う投資
教育移住を「消費」ではなく「投資」と捉えるならば、私たちが購入しているのは「カリキュラム」という商品だけではありません。そのカリキュラムをどう教え、どのような価値観で子どもたちを包み込み、どんな世界への扉を開いてくれるのかという「環境全体」です。
校長は、その環境の「総責任者」であり、文化の創り手です。校長が外の世界と積極的に関わり、新しい知見を持ち帰る学校は、必然的に変化に対応し、進化し続けることができます。逆に、内向きで、変化を恐れるリーダーシップの下では、たとえIBやIGCSEといった優れたカリキュラムを採用していても、その真価を発揮できない可能性があります。
長男のZen(2020年生まれ)が通う学校では、校長が教師陣の海外研修を積極的に後押ししています。その結果、教室に戻ってきた教師たちは、新しい教授法に目を輝かせ、子どもたちにもその熱意が伝わってきます。これは、校長の「外への志向性」が直接、教室の空気を変えている好例です。
学校選びの新基準:リーダーシップをどう評価するか
では、実際に学校を選ぶ際、校長や学校のリーダーシップをどう評価すればよいのでしょうか。日本からでは難しい面もありますが、以下のポイントをチェックリストに加えることをお勧めします。
1. 学校のウェブサイトやSNSを精査する
校長のメッセージがどのように発信されているか。単なる事務的な連絡ではなく、教育者としての哲学やビジョンが語られているか。また、学校が主催または参加している国際的なイベントや、校長の外部活動(講演、執筆、委員会活動など)についての情報が開示されているかを見ます。
2. オンライン説明会で質問する
多くのインターナショナルスクールがオンライン説明会を開催しています。その際、「校長先生の教育哲学について教えてください」や「学校はどのようにして教師の国際的な専門性を高めていますか」といった質問を投げかけてみましょう。答え方や具体例から、学校の「志向性」が見えてきます。
3. 在校生・卒業生の保護者の声を探る
可能であれば、ネットワークを通じて在校生や卒業生の保護者にコンタクトを取り、校長のリーダーシップについて聞いてみます。「校長は保護者の声に耳を傾けるか」「変革を恐れないか」「子どもたちにどのような影響を与えていると感じるか」といった実体験は、非常に貴重な情報です。
マレーシアの優位性:多様なリーダーシップが共存する場
マレーシアのインターナショナルスクール環境の強みの一つは、この「リーダーシップの多様性」にあります。英国式、米国式、IB一貫校など、カリキュラムだけでなく、学校を率いる校長の背景も多岐に渡ります。
元々マレーシアは多民族国家。マレー系、中華系、インド系、そして多くの外国人居住者が共存する社会です。そのため、学校のリーダーも多様な文化的背景を持ち、国際的な視野を持つ人材が集まりやすい土壌があります。クン校長のように、国際的な舞台で活躍する教育者がいることも、この環境ならではと言えるでしょう。
私たちがペナンを選んだ理由の一つも、この「開かれた環境」にあります。地域に根ざしながらも、世界を意識する。そんなバランスの取れたリーダーシップを持つ学校が複数存在する点は、教育移住の第一歩として非常に安心感があります。
最新為替情報と教育投資の視点
教育環境を「投資」と捉える時、為替は重要な要素です。現在のレートは、1 MYR = 40.21 JPY (2026年4月17日現在)です。
このレートを前提に考えると、マレーシアのインターナショナルスクールの学費は、日本の一部のインターナショナルスクールや欧米の学費と比較して、依然としてコストパフォーマンスに優れています。つまり、同じ予算で、より「質の高いリーダーシップ」と「国際的な環境」を手に入れる可能性が高いのです。
校長が国際カンファレンスで登壇するような学校は、学費が突出して高いとは限りません。むしろ、教育への熱意とビジョンが、学校の文化として根付いている証です。教育移住の判断においては、学費という「数字」だけでなく、校長のビジョンや学校の「志向性」という「質」に目を向ける投資家のような視点が、これからはより重要になるでしょう。
子どもの未来を拓く「環境」を選ぶということ
次女のYukari(2024年8月生まれ)はまだ1歳半。彼女が学校に通う頃には、世界はさらに変化しているでしょう。私たち親にできることは、変化そのものを恐れるのではなく、変化を理解し、むしろその波に乗るための「環境」を子どもたちに用意してあげることだと思います。
その環境の中心には、優れた「リーダー」がいます。文科省の研修会のニュースは、日本も変わろうとしている意志を示しています。しかし、教育移住を考える私たちは、すでに「実践」と「発信」の現場を選択肢にできる立場にあります。
学校選びの際には、カリキュラムや施設、学費だけでなく、ぜひ「誰がこの学校を率いているのか」にも注目してみてください。校長の言葉や行動から感じられる「未来への志向性」。それが、お子さんの教育環境の、最も確かな品質保証になるかもしれません。

